その十八 九点円の話

 やっぱ九点円でしょ.美しく奥が深い.その九でもとりあげたが再掲&もっと深く掘り下げてみようと思います.

九点円△ABCのBC,CA,ABの中点をD,E,F,三頂点から対辺に下ろした垂線の足をL,M,N,垂心Hと三頂点との中点をP,Q,RとすればD,E,F,L,M,N,P,Q,Rの九つの点は同一円周上にある.

う〜ん,美しい.それでは証明をば.

九点円証明1 △ABCにおいて,F,EはそれぞれAB,ACの中点であるので中点連結定理より
FE/BC=1/2,FE//BC.
同様に△HBCにおいてもQ,RがHB,HCの中点であるので
QR/BC=1/2,QR//BC.
したがって
EF=QR,EF//QR
より四角形EFQRは平行四辺形となる.
また,
FQ//AL,EF//BC,AL⊥BC
であるので
FQ⊥EF
となり,平行四辺形EFQRは長方形となる.
同様に四角形DEPQ,四角形FDRPも長方形である.
したがってそれらの対角線は等しく
DP=EQ=FR
となり,これらはおのおのの中点で交わっている.
その点をXとすれば六点DEFPQRは点Xを中心とした円周上にある.
DPはその円の直径の一つであるが,
∠DLP=90°
より点Lがこの円周上にあるといえる.
同様に
∠EMQ=∠FNR=90°
より点M,点Nもこの円周上にある.
したがって,九点DEFLMNPQRは同一円周上にあることが分かった.


いやはや,見事な図である. でもまだこれでは終わらない.

Euler線1△ABCの九点円の中心Xは外心Oと垂心Hとの中点である.
したがって点Xは△ABCのEuler線上にある.

Euler線はその十六参照.△ABCの外心O,重心G,垂心Hを通る直線だ.この直線の上に九点円の中心Xが乗っかっているというのだ.しかも外心と垂心の中点だなんて.

Euler線2△ABCの外心をO,重心をG,垂心をH,九点円の中心をXとする.
OD⊥BC,OE⊥CA,OF⊥AB
であり
BC//EF,CA//FD,AB//DE
であるので
OD⊥EF,OE⊥FD,OF⊥DE
となり,Oは△DEFの垂心となる.
三点AGDは同一直線上にあり,この直線とEFとの交点は平行四辺形AFDEの対角線の交点なのでEFを二等分する.
同様にBGE,CGFもFD,DEを二等分するのでDG,EG,FGは△DEFの中線である.
したがってGは△DEFの重心でもある.
また,点Xは△DEFの外接円の中心なので外心である.
したがって三点O,G,Xは△DEFのEuler線の上にある.
ところがOとGを通る直線は△ABCのEuler線でもあったので,この直線の上に点Hも乗っているといえる.
したがって四点O,G,X,Hは△ABCのEuler線上にある.
また,
OG:GX=2:1,OG:GH=1:2
なので
OX/OH=(3/2)/3=1/2
よりXはOHの中点ということが分かった.


このことから,九点円と外接円と垂心について次のような関係を見出せるだろう.
外接円と九点円 九点円の中心は△DEFの外心であるのでその半径は外接円の半径の半分である.
また,九点円は△PQRの外接円でもあり,△ABCと△PQRの相似の中心が△ABCの垂心Hであることから,九点円は△ABCの外接円をHに関し1/2に縮小したものであるといえる.


したがって外接円周上の任意の点Sと垂心とを結ぶ線分の中点S'は九点円周上にある. このことを利用して次の「シュタイナーの定理」を証明しよう.
シュタイナーの定理△ABCの外接円周上の点Sから三角形の三辺またはその延長に下ろした垂線の足をU,V,Wとすると三点U,V,Wは同一直線上にある,というのがシムソンの定理.
この直線を△ABCの点Sに関するシムソン線という.(その九参照)
△ABCの垂心をHとし,外接円周上の点をSとすると,線分HSの中点は点Sに関するシムソン線上にある.
シュタイナーの定理証明AからBCへ下ろした垂線の足をL,ALの延長と外接円との交点をL'とすると,Lは△ABCの九点円上の点なので
HL=LL'
をみたす.
また,SからBC,CAへ下ろした垂線の足をU,Vとし,SUの延長と外接円との交点をS'とすると,
∠SUC=∠SVC=90°
より四点SUCVは同一円周上にあり,円周角の定理より
∠SUV=∠SCV.・・・(1)
また四点SCAS'は同一円周上にあるので,円に内接する四角形の内角とその対角の外角が等しいことより
∠SCV=∠SS'A. ・・・(2)
(1)(2)より
∠SUV=∠SS'A
となり,同位角が等しいので
UV//S'A・・・(3)
となる.
Hを通りS'Aに平行な直線を引き,SS'との交点をTとすると四角形AS'THは平行四辺形となる.
四角形AS'SL'が等脚台形であることより四角形HTSL'は等脚台形となる.
LはHL'の中点でHL⊥LUよりUはSTの中点であることがわかる.
△SHTにおいて中点連結定理よりXはSHの中点であることが示された.


Xは垂心と外接円周上の点との中点なので九点円上にあることになるのだ.

さらにシムソン線についてもうひとつ.
直径の両端のシムソン線 △ABCの外接円の直径をSTとする.
このときSに関するシムソン線とTに関するシムソン線とは直交する.
直径とシムソン線証明 S,TからBCへ下ろした垂線と外接円との交点をそれぞれS',T'とすると先ほどの(3)よりSに関するシムソン線UVW,Tに関するシムソン線U'V'W'に対し
UVW//AS'・・・(4)
U'V'W'//AT'・・・(5)
が成り立つ.
ここでSS'TT'が長方形となることからS'T'もこの外接円の直径となる.
したがって
AS'⊥AT'・・・(6)
である.
(4)(5)(6)より
UVW⊥U'V'W'
が示された.

シムソン線と九点円 以上のことから,S,Tに関するシムソン線はHSの中点X,HTの中点Yを通り,このX,Yは△ABCの九点円上の点であることがいえた.
また,XYはこの九点円の直径になっていて,二つのシムソン線の交点をZとすると∠XZY=90°をみたすことからZも九点円上にあるということがわかる.

さあ,本題はこれから.

フォイエルバッハの定理 △ABCの九点円と内接円,傍接円は接する.

いわゆるFeuerbachの定理
これを示すためにはちょっと厄介な準備が必要となる.
AB=ACならば九点円と内接円は,ともに辺BCにBCの中点Dにおいて接する.以下,AB>ACとして話を進める.
フォイエルバッハの定理証明1 △ABCの∠Aの二等分線とBCとの交点をW,△ABCの内接円とBCとの接点をS,BCの中点をDとする.
また,Wから内接円にWSと異なる接線WS'を引き,S’を接点とする.
このときDS'と内接円とのもうひとつの交点をVとするとVは△ABCの九点円上にある.

このVが内接円と九点円との接点であることを示すのである.
フォイエルバッハの定理証明2 WS'とABとの交点をC'とする.
△AWCと△AWC'において,AWは∠CAC'の二等分線より
∠CAW=∠C'AW
同様に
∠AWC=∠AWC'
また,AWは共通であるので,
△AWC≡△AWC'
といえる.
AWとCC'との交点をXとするとXはCC'の中点である.
したがって中点連結定理より
BC'//XD
XD=BC'/2・・・(7)
となるので
∠BAW=∠DXW.・・・(8)
また,AからBCへ下ろした垂線の足をLとすると
AL⊥CL,AX⊥CX
より四点A,X,L,Cは同一円周上にあり,
∠CAW=∠XLW. ・・・(9)
(8)(9)より接弦定理の逆からXDは△XWLの外接円に接する.
したがって方べきの定理より
DX^2=DW・DL・・・(10)
となる.
また,
DS=BS-BD=(AB+BC-AC)/2-BC/2=(AB-AC)/2・・・(11)
(7)より
DX=BC'/2=(AB-AC')/2=(AB-AC)/2・・・(12)
したがって(11)(12)より
DS=DX.・・・(13)
さらに,方べきの定理より
DS^2=DS'・DV
であるが(10)(13)より
DS'・DV=DS^2=DX^2=DW・DL
となるので方べきの定理の逆よりS',V,W,Lは同一円周上にある.・・・(14)
フォイエルバッハの定理証明3 したがって
∠DVL=∠C'WB
となるが,
∠C'WB=∠AC'W-∠B=∠C-∠B
である.
DとLは九点円上の点で,ACの中点をEとするとEは直角三角形ALCの斜辺の中点なので
EL=EC
より
∠ELC=∠C
となる.したがって
∠DEL=∠ELC-∠EDC=∠C-∠B
となることから円周角の定理の逆よりD,E,L,Vは同一円周上にある.
したがってVは九点円上の点となるのである.


もうひといき.
フォイエルバッハの定理証明4 この点Vを通る内接円の接線とWS'との交点をYとする.
YV,YS'はともに内接円への接線なので
YV=VS'.
したがって
∠YVS'=∠YS'V
である.
また,(14)より
∠YS'V=∠VLC.
したがって接弦定理の逆より△DLVの外接円は点VにおいてVYに接する.
ここで△DLVの外接円とは九点円に他ならなかった.
ということは九点円と内接円は同一の点において同一の直線に接する.
すなわち九点円と内接円は点Vにおいて接すると言える.


長かった・・・.傍接円についても同様に証明できるがこれも大変である.
九点円の持つ魅力を少しでもわかっていただけただろうか?

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