その十一 続・作図の話

 その十ではコンパスのみによる作図を試みたが今回は正多角形の作図に挑戦する.詳しい話は大学のときに勉強するのだが,定木とコンパスのみを用いて作図しうる正多角形は正2p3q5r17s257t65537u角形と表しうる.ただしq,r,s,t,uは0または1でpはq,r,s,t,uのすべてが0のときは2以上の自然数,そうでないときは0以上の整数.ちょっとややこしい感じだが2と3と5と17と257と65537のうちいくつか選んで掛け算した数字になる,ということだ.数字の小さい物から挙げていくと正3角形,正4角形,正5角形,正6角形,正8角形,正10角形,正12角形,正15角形,正16角形,正17角形,正20角形,正24角形,正30角形,・・・といった具合.ここでは正3角形,正4角形,正5角形,正6角形,正8角形,正17角形の作図を考える.

 まずは簡単な正3角形,正4角形,正6角形,正8角形の作図から.

(1)正3角形
正3角形円Aの直径をBCとし,Bを中心として半径BAの弧を描き円Aと交わった点をD,Eとすれば△CDEは正3角形.
(2)正4角形
正4角形円Aの直径をBCとし,BCの垂直二等分線と円Aの交点をD,Eとすれば四角形BECDは正方形.
(3)正6角形
正6角形円Aの直径をBCとし,B,Cを中心として円Aの半径と等しい弧と円Aと交わった点をD,E,F,Gとすれば六角形BDECFGは正6角形.
(4)正8角形
正8角形円Aの直径をBCとし,BCの垂直二等分線と円Aの交点をD,Eとする.角BADの二等分線と円Aとの交点をF,GとしFを中心に半径BDの弧を描き円Aとの交点をH,Iとすれば八角形BHEGCIDFは正8角形.

 てな具合.あとは角の二等分を用いて2n倍の正多角形が作図可能.

 次はなかなかややこしい正5角形と正17角形について.
(5)正5角形
正5角形円Oの直径をACとし,ACの垂直二等分線と円Oとの交点をB,Dとする.OBの中点をEとし,Eを中心として半径EAの弧を描き,直径BDとの交点をFとする.このときAFの長さが円Oに内接する正5角形の一辺の長さになっている.これを円周上に順につなげていけば正5角形AGHIJの完成.

 さあ,この作図で正5角形になっているのだろうか?証明のためにちょっと計算してみることにしよう.
円Oを,複素平面上の原点を中心とする単位円として,点Aをz=1を表す点としよう.
このとき,正5角形の五つの頂点は,の解で表されているはずだ.
・・・(ア)
と書ける(ただしk=0,1,2,3,4).
これより正5角形の一辺の長さは,

となる.
さあ,という方程式をを代数的に解いてみることにして,(ア)式の実部・虚部と比較して上の作図の正当性を確かめることにしよう.
より,因数分解するととなるので
または
後者の四次方程式を解くのだが,z≠0を確認した後に両辺をz2で割ると
・・・(イ)
となる.
(イ)の方程式を解くために
・・・(ウ)
と置く.
(ウ)の両辺を平方してを得る.
これを(イ)式に代入して(イ)式をxの方程式に書き換えてみると,
・・・(エ)
(エ)の方程式を解けば

となる.(上の図でOFの長さがになっている.これをαとおくことにしよう.)
(ウ)より,から両辺にzをかけてまとめると


と解けた.
(ア)と比較して,

さて,上の図でAFの長さはとなるが,αは(エ)の方程式の解だったのでとかけて,

となる.だったのでAF=となって正5角形の一辺となった.


(6)正17角形
正17角形1円Oの直径をA,Bとし,ABに直交する直径をC,Dとする.
AOの中点をE,EOの中点をFとし,Fを中心に半径FCの円を描く.
円Fと直径ABとの交点のうち,Aに近いものをG,Bに近いものをHとする.

正17角形2点Gを中心として半径GCである円とABとの交点のうち,Bから遠い方をI,Bに近い方をJとする.
同様に点Hを中心として半径HCである円とABとの交点のうち,Aに近い方をK,Aから遠い方をLとする.
AJの中点をMとし,直径がAJであるような円MとCDの交点の一つをNとする.

正17角形3OLの中点をPとし,Nを中心に半径OPの弧を描きABとの交点のうちAに近い方の点をQとする.
Qを中心に半径QNの円を描きABとの交点のうちAから遠い方をRとする.

正17角形4ORの中点をS,ORの垂直二等分線と円Oとの交点の一つをTとして,ATの長さで円周を等分するとATUVWXYZA'B'C'D'E'F'G'H'I'は正十七角形.

 何だかほとんど円になってしまった.これも正5角形同様方程式を解いてしまうことにする.
円Oを複素平面上の単位円として,点Aをz=1を表す点としよう.
このとき正17角形の17個の頂点はz17=1の解で表されているはずだ.
・・・(ア)
と書ける(ただしk=0,1,2,・・・,16).
これより,正17角形の一辺の長さは,

となる.
さあ,という方程式を代数的に解いてみることにする.
(ア)で表される17個の解のうちk=0の時はになる.
それ以外のものを求めるのだが,面倒な下準備がいる.
とおくことにする(n=1,2,・・・,8).このときであり,正17角形の一辺の長さはである.


とおく.このとき
・・・(イ)
・・・(ウ)
を示そう.

で,解と係数の関係より,またより

となる.また,

だが,たとえばというように,という演算が成り立つ(ただしm+nが8を超えたときは17-(m+n)とする)ので,

さて,(イ)(ウ)よりα,βは

の二つの解となり,
となる.(図でよりになっている.)

とおく.
このとき,

となることを示そう.
は明らかなので

は明らかなので

したがってγ,δは

の二つの解となり,またε,ζは

の二つの解となる.
したがって

となる.(図でよりOI=-ζ,OJ=ε,OK=-δ,OL=γになっている.)




より,

となるので,

と解ける.
(図ではMA=,MO=
よりで,だ.
よりとなっていて正17角形の一辺になった.)
zkについてはの方程式を解いて

(k=1,2,・・・,8)と解ける.

ちょっと作図も数式もごちゃごちゃしてるがこんな具合.
(参考:『定木とコンパスで挑む数学』大野栄一・講談社ブルーバックス)

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