その九 初等幾何の話
「かたち」の世界も「かず」の世界同様心を惹かれるものである.均整のとれた図形や神秘的とも言える定理には感動さえおぼえる,とまで言ってしまうとちょっと変な人扱いされるかな?
ここで扱うものは初等幾何,点と直線と円とで構成できるシンプルなもの.その中でも私なりに「美しい」と思う定理をいくつか挙げてみたい.
まずは平行線と相似比を巧みに利用する「メネラウスの定理」.
△ABCにおいて,直線BC上に点D,直線CA上に点E,直線AB上に点Fをとり,三点DEFが一直線に並んでいるとすれば

それがどうした,と言われそうだが線分の比を求めたりするのにかなり有用な定理.
ならば
(比の値が等しいこと)をつかう.
DEFと平行に点Cを通る直線を引き,ABとの交点をGとする.このとき△BCG∽△BDFなので,
BD:CD=BF:FG
したがって
…(1)
また,△AFE∽△AGCなので,
CE:EA=GF:FA
したがって
…(2)
(1)(2)より,
となって,約分してしまえば与式は1と等しくなる.
逆に,直線BC,CA,AB上に点D,E,Fを,これらのうち2つが辺上にあるか3つとも辺上にないようにとり,
ならばDEFは同一直線上にある,ともいえる.(メネラウスの定理の逆)
三角形ABCとAB,BC,CA上の点D,E,Fが
…(1)
を満たすとする.
CをとおりDFと平行な直線を引き,ABとの交点をGとすれば△BCG∽△BDFなので,
…(2)
(1)(2)より
約分して
したがって
となるのでEF//GCとなる.
ここで,GC//DFだったのでEF//DFとなるがこの二直線は同一の点Fを通るので一つに重なる.したがって三点D,E,Fは同一直線上にある.
三点が同一直線上にある証明はこれを多用する. 高校でベクトルを習ってこの手の問題をベクトルを利用して証明したりするのだがメネラウスの定理さえあれば暗算で確認ができる.
次は「チェヴァの定理」.メネラウスの定理が三角形とそれを横切る直線だったのに対し,こちらは三角形と一点の関係.
△ABCとその三辺の延長上にない点Gにおいて,AGとBC,BGとCA,CGとABのそれぞれの交点をD,E,Fとすると,

メネラウスの定理とよく似た式,というか同一の式だ.
図より,
AF:FB=△AFC:△BFC=△AGC:△BGC
BD:DC=△BDA:△CDA=△BGA:△CGA
CE:EA=△CEB:△AEB=△CGB:△AGB
したがって

これまた逆に,直線BC,CA,AB上にD,E,Fを3つすべて,または1つだけが辺上にあるようにとり,
ならばAD,BE,CFは一点を共有する.
(チェヴァの定理の逆)
ADとBEの交点をG,ADとCFの交点をHとして,GとHが一致することを示す.
△ABDと直線CGに対してメネラウスの定理を適用して,
また,仮定より
を変形して
この二つより,
同様に,△ACDと直線BHに対しメネラウスの定理を適用して,
したがって
となり,
となるのでGとHが一致して三直線が一点を共有する.
う〜ん,もっと簡潔な証明はないものか….
次は円周角の定理と中点連結定理を巧みにを使った「九点円の定理」.
△ABCのBC,CA,ABのそれぞれの中点をD,E,F,三頂点A,B,Cから対辺におろした垂線の足をL,M,N,垂心をHとしてAH,BH,CHの中点をP,Q,Rとすると九つの点DEFLMNPQRは一つの円周上にある.
九つも点があるなんて大変,って気もするが.
四角形DEPQが長方形であることを示そう.
CA,CBの中点がE,Dであったことより
ED//AB,ED=1/2AB.…(1)
また,HA,HBの中点がP,Qであったことより
PQ//AB,PQ=1/2AB.…(2)
(1)(2)より,四角形DEPQは平行四辺形.
また,AC,AHの中点がE,PであったことよりEP//CH.
CH⊥ABだったのでEP⊥PQ.
したがって平行四辺形DEPQは長方形になり,四点DEPQはDPを直径とする円周上にある.
まったく同様に四角形DRPF,四角形FQREも長方形となり, DEFとPQRは同一円周上にある.
さらに,∠DLP,∠EMQ,∠FNRはいずれも直角なので,点L,M,Nもこの円周上にある.
したがって九つの点は一つの円周上にある.
これには正直感動してしまった.
今度も円を絡めた「シムソンの定理」.
△ABCの外接円上に点Dをとり,Dから三辺およびその延長上におろした垂線の足をE,F,Gとすると三点E,F,Gは同一直線上にある.
同一直線上にある,ということをいかに証明するかだが,ここでは∠GEB=∠FECという方針で.
∠BGD=∠BED=90°より,四点BGEDは同一円周上にある.
したがって
∠BDG=∠BEG.…(1)
同様に∠CFD=∠CED=90°より,四点CEDFは同一円周上にある.
したがって
∠CDF=∠CEF.…(2)
また,∠AGD=∠AFD=90°より
∠A+∠GDF=180°
四点ABDCは同一円周上にあるので
∠A+∠BDC=180°
したがって∠GDF=∠BDCとなるのでそれぞれから∠GDCを引いて
∠BDG=∠CDF.…(3)
(1)(2)(3)より∠BEG=∠CEFとなり,三点E,F,Gは同一直線上にある.
高校のときに偶然発見したのが,「点Dと△ABCの垂心の中点はシムソン線の上にある」という定理(「シュタイナーの定理」)だがこれはその十八にて.
他にもいろいろあげたいけどその九ではここまで.ひょっとしたら別な定理を追加するかも.
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